【痛みが消えないで悩んでいる人達に向けて】
痛みは誰でも感じることがある、なんともイヤな感覚です。
転んで足を捻ったり、何かに身体をぶつけると痛くなります。
しかし荷物を持ち続けるだけでも腕が痛くなり、長く座っていただけで、痛くて立てなくなることがあります。
そして治ったはずの膝の痛みが、時どきぶり返すこともあります。
また、
「何もしていないのに、今朝起きたら腰が痛い」
「病院に行ったけど、異常が無いと言われた」
というように原因が分からない痛みに悩んでいる方が多いのではないでしょうか。
また前に治ったはずの腰の痛みがいつまたぶり返すのか、と心配しながら生活している方も少なくないでしょう。
これら身体の痛みについては、これまでの理論や知識ですべてを説明するのは難しいように思えます。
そこで僕が気づいた、考え方の根本が異なる
『相対痛(そうたいつう)』
という「ちょっとしたアイデア」を紹介したいと思います。
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僕は中学生の頃に恩師からいただいた
「それが自然の事物や現象である限り、矛盾することは決して起こらないものである」
という言葉が今でも忘れることができません。
そのため、毎日の仕事やふだんの生活のなかで矛盾を感じたり、納得できないことに出会うと、すぐに結論を出すことを避け、
頭の隅に置いた「ハテナ箱」と名付けた箱に一旦放り込んでいます。
そしてあとから新しい知識やアイデアを得たときに、それらを取り出して考え直すことを習慣にしているのです。
またある患者さんからいただいた、「良いことは(同時に)二つ無い」という言葉も大切にしています。
これら二つの言葉を道しるべに、疑問の本質をとらえ、既存の知識と身のまわりで起こる現実をあらためて公平に見つめ直し、
より自然な答えを導き出す。
これが僕の考えの進めかたです。
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「相対痛」というアイデアが一つの答えと言えるのかどうか、僕にはまだ分かりません。
しかし、少なくともこれまでの痛みについての説よりも、はるかに矛盾が少ない説明ができるのです。
本書はおもに手・足・体幹(たいかん・頭や首を含めた胴体部分)からなる運動器(骨や筋肉など)の、動作による痛みの原理について考えていきます。
また本文の説明には、なるべくやさしい用語を選んで、全体として物語のように書くことを心がけました。
みなさんもご一緒に、痛みの不思議を違う方向から考え直し、より良い回復の道を探す旅を始めてみましょう。
著者名:野村 泉太郎
【目次】
相対痛入門
まえがき
第一章 悩ましき筋肉痛
◆身のまわりにある四つの痛み
◆筋肉痛は、筋肉の修復時の痛み?
◆衝撃的だった「痛み=筋緊張説」との出会い
◆筋緊張とは?
◆「もやもや」させていたもの
◆筋緊張説は、筋肉痛を説明できるか?
◆筋緊張説の矛盾 その1
◆筋緊張説の矛盾 その2
第二章 感覚が伝えているのは何?
◆身近な感覚を考えなおす
◆感覚器官1 味覚
◆感覚器官2 聴覚
◆感覚器官3 視覚
◆感覚器官4 嗅覚
◆感覚器官5 触覚・皮膚感覚
◆炎症は本当に熱を出すのか?
◆測定結果
◆実測からわかったこと
◆まとめ 脳は瞬時に違いを感じ取る
第三章 私たちは、どのように身体を動かしているのか
◆身体を動かす筋肉のはたらき
◆筋肉とオーケストラ
◆「歩く」という童謡
◆筋肉を動かせるようになること 曲が弾けるようになること
◆意識する動きから自動運動へ
◆まとめ 私たちは筋肉を無意識に動かしている
第四章 新しい痛みの原理を求めて
◆「何が」脳に痛みを感じさせるのか?
◆ひらめいた
◆「何の差」が、「どう違う」のか?
◆名づけて『相対痛』
◆一つの筋肉のなかにも起こる相対痛
◆関節が痛くなる秘密
◆相対痛と成長スパート
◆まとめ 相対痛を定義する
第五章 脳が反応する信号としない信号
◆身体の信号が伝わる仕組み
◆クモの巣とクモの反応
◆振動の種類と反応の分類
◆小さな信号の落とし穴
◆勘違いし、錯覚する脳
第六章 相対痛は筋肉痛を説明できるか?
◆解決されていなかったハテナ
◆ハテナ②を考えなおす
◆ハテナ③が解けた!
◆ハテナ④への応用
◆ハテナ①の最終回答
◆ハテナ⑤への解答
◆跛行について
第七章 身近な痛みを相対痛で説明する
◆検証1.朝起きると、また腰が痛いのはなぜ?
◆検証2. 病院で、原因が見つからないことがあるのはなぜ?
◆検証3.練習を休んでも、また痛くなるのはなぜ?
◆検証4.ストレッチを毎日しても痛みが消えないのはなぜ?
◆ストレッチの効果
◆検証5.走ると痛い、サーブのときだけ痛いのはなぜ?
◆検証6.サポーターを取ると痛みが強くなるのはなぜ?
◆検証7.コルセットを外すと痛みが強くなるのはなぜ?
◆検証8.かちかちになっている腰のこわばりや肩こりは何?
◆検証9.無意識に痛い動作をしてしまうのはなぜ?
◆検証10.冷やすか温めるか、どちらが良いの?
◆検証11.何もしていないのに、なぜ突然痛くなるの?
◆地すべりが起こるまで
第八章 筋痙攣(きんけいれん)・こむらがえり・こむら返し
◆こむらがえりの原因
◆暴走痙攣 こむら返し
◆ギックリ腰は腰のこむら返しか?
◆こむらがえりは起こるよ、どこにでも
◆こむらがえりの原因(仮説)について
◆ぶり返し なぜまた痛くなるのか?
◆ぶり返しの回避術
第九章 ケガの痛みと相対痛
◆医学的な解釈との共存と、異なる視点
◆あなどれない「ももかん」
◆鶏肉で痛みを分解する
◆足首を捻挫したW君のお話
◆足首に何が起こったのか?
◆痛みを「感じ過ぎてしまう」可能性
◆靭帯が「伸びて」損傷したと考えるわけは?
◆反射を起こさない筋肉なんて・・・
◆ズラされる腱しょう
◆足首の捻挫に対する身体の素直な反応
最終章 自然と痛くなるわけ
◆自然のさまざまな変化と、自然な身体の移り変わり
◆自然と人が目指す一つのもの
◆痛みの謎の「正体」
あとがき
著者プロフィール